最近お腹がポッコリしてきたので、運動の為に自転車通勤にしようかと考え中です。
自転車が進むための力をモーターで補助する電動アシスト自転車の進化版だ。下りの坂道など、アシストが不要な時にはモーターが発電機に切り替わって電気をバッテリーに蓄える。2012年1月に事業統合したパナソニックと三洋電機の自転車部門が一体となって開発し、11年12月に発売した。シリーズで月産3000台を計画しているが、それを上回るペースでの好調なスタートを切っている。
前輪の車軸に装備したモーターで駆動をアシストする。通常のアシスト自転車は、ペダルの位置にモーターを設置し、チェーンを通じて後輪の駆動力を補助する方式となっている。車輪の回転で電気を起こして蓄えることを「回生充電」と呼ぶが、前輪が回転する力をチェーンを介さずにダイレクトに活用することで回生充電が効率よくできるようにした。前輪駆動方式の狙いはそこにある。
ビビチャージの場合、回生充電は下り坂やブレーキをかけた時だけでなく、平地を走っている時でも走行モードの選択によっては、回生充電ができる。試乗し、平地を走っているとペダルが少し重くなって、回生充電が始まった。しかし、ペダルに力を込めると「早く走りたい」という意思が制御装置に伝わり、回生充電が解除されるだけでなく、瞬時にモーターによるアシストが加わってきた。
ペダルを踏み込むと、エンジンとモーターの両方で加速するハイブリッド車(HV)のような感覚だった。実際、回生充電とアシストの切り替えなどの制御は、HV並みである。ビビチャージが幅広い回生充電にこだわったのは、家庭電源でフル充電した後の走行距離を延ばし、充電頻度を減らすためだ。走行しながら発電するので、電気代の節約ができる一方、充電の手間は減る。
バッテリーは容量によって3タイプが選べるようになっており、今回、業界で最大容量となった16Ah(アンペアアワー)のモデルだと、フル充電から連続160キロの走行ができる。パナソニックの従来品との比較では約60キロ延長された。価格は最廉価グレードが12万9000円で、回生充電のない、従来品の売れ筋モデルより2万円ほど高い。
アシスト自転車の国内需要はここ10年拡大を続けており、11年は前年を約1割上回る43万台程度となった。この市場でパナソニックは4割強のシェアで最大手、三洋は1割強を確保していたので、事業統合により過半を占める勢力となった。
かつての競合社に出向し製品開発に燃えた技術陣
ビビチャージの開発プロジェクトは、10年秋に発足した。当初は三洋の技術陣や商品企画担当者らが、パナソニックの自転車事業会社「パナソニック サイクルテック」に出張しながら開発を進めていた。10年春には、五十数人の三洋社員が同社への出向に切り替え、開発を加速させていった。この自転車の技術でカナメとなる制御システムの開発リーダーを務めた商品開発部モータ開発チーム参事の数原寿宏(49歳)も、三洋出身だ。
1994年から一貫してアシスト自転車の制御システム開発に携わってきたベテランであり、回生充電装置も業界に先駆けて実用化した実績がある。数原は、今回のプロジェクトが立ち上がる時の三洋技術陣の心境を「これまでライバルとして競ってきた会社で開発に携わるのは、とても複雑だった」と代弁する。だが、三洋ブランドとしてのアシスト自転車の開発はすでに終了が決定されており、「われわれの技術を生かし、いい商品を出そう」と、割り切って前にこぎ出すことにした。
回生充電の機構は三洋の技術とする方針だったし、バッテリーも性能は世界トップ級と評価される三洋のリチウムイオン電池が採用されることになった。ただ、混成チームでの設計が始まると、双方の技術者が戸惑う場面も少なくなかった。
数原の担当分野でも、電動アシストの効かせ方で決まる「乗り味」に対する両社の考え方が相当違うことが分かった。数原によると「三洋の味付けは、アシストを最初にガンと効かせるタイプだったが、パナソニックは滑らかな走りだしを重視」してきたという。議論が熱を帯びることがあったものの、数原はパナソニックの伝統を尊重しながら、制御ソフトを設計していった。
企業風土の違いから学ぶこともあったという。たとえば、問題が発生すると技術者同士が「闊達に言い合える雰囲気」などである。「われわれは、一旦目標が決まるとそこに向けて突っ走るタイプ」と数原は笑う。技術者には、これら両方の資質が求められるのだろうが、数原にはパナ流が新鮮に映った。
パナソニックは家電などで、機械が自律的に電気の無駄使いを判断して節電する商品を社内認定し、「エコナビ」の商標を付けている。ビビチャージは、同社の自転車では初めてエコナビに認定された。三洋の回生充電技術があってこそであろう。
数原の新たな挑戦は、パナソニックが欧州の自転車やバイクメーカー向けに供給している電動アシストユニットの市場開拓だ。各社の要望に応じたユニットを開発することで、販路や数量の拡大が期待できるという。三洋でもユニット輸出は手掛けてきたが、「規模はパナソニックの方がずっと大きいので、やり甲斐がある」。そう言って数原は、口元を引き締めた。