知り合いが3Dテレビを購入したのですが、やはりメガネをいちいち装着しなくてはいけないという面倒くささのせいか、ほとんど3Dにして視聴することはないそうです。立体視対応のソフトなどが少量ということもあって、購入はしてみたけど使わない機能になってしまうことが多そうですね。
電機業界の最終兵器と期待された「3D(3次元)」関連商品が伸び悩んでいる。ゲーム機、パソコンといった対応商品の普及の足取りは重く、特にテレビは市場投入から1年あまりが過ぎたが、テレビ全体の販売に占める割合は1割未満にとどまっている。しかも、各社は3Dテレビを付加価値の高い「収益源」と見込んでいたが、価格下落のスピードは3D非対応のテレビより速い。コンテンツ不足や煩わしさを感じる専用メガネ…。3D普及に向けて乗り越えるべき壁はあまりに多い。
シェア7%止まり
「消費者の興味を引く自信はあるが購入に結びつかない。普及には相当時間がかかる」
大手メーカーの担当者は3Dテレビの伸び悩みにため息をつく。昨年4月の国内初登場以来、家電市場の話題の中心となった3Dテレビだが、市場はいっこうに盛り上がらない。調査会社BCNによると、テレビの総販売台数に占める3Dテレビの割合は5月で6.8%にとどまる。その理由は明白だ。
「コンテンツが少ない」。米ディスプレイサーチの鳥居寿一アナリストが指摘するように、現状では3D番組を見られるチャンネルは数えるほどだ。スカパーJSATが衛星放送で放映する「3D専門チャンネル」は毎月10~20本程度の番組を放送しているが、スポーツが全体の半数以上。担当者は「数以上に魅力あるコンテンツづくりが重要」と話すが、映画やドラマなどのコンテンツは少ない。
もう一つの弱点が「メガネ」。調査会社GfKジャパンによると、消費者の3Dテレビに対する不満はコンテンツ不足に次いで、「追加購入のメガネの価格」(52%)、「付属のメガネの本数」(46%)などメガネにまつわるものが多い。
わずか1年で半額
テレビ全体の価格が急落する中、電機各社は3Dという付加価値で市場を再び活性化させようと躍起だ。ソニーは「3Dをグループ全体の取り組みとして加速する」(ハワード・ストリンガー会長兼社長)との目標を掲げ、40型以上では23機種中21機種が3D対応。パナソニックもすでに18機種中16機種を対応機種とした。昨年末にメガネなしで3D映像を楽しめる世界初の裸眼3Dテレビを発売した東芝も年度内に40型台と50型台の複数機種を発売する予定だ。
だが、皮肉なことに「各社がこぞって3D機能を標準搭載すれば、高価格を維持できない」と鳥居氏は指摘する。BCNによると、昨年5月に26万7900円だった40型台の3Dテレビの平均単価は先月13万6000円まで下落し、わずか1年で半額まで値崩れした。ここでも電機各社の皮算用がはずれた。
パソコンでも3D対応機種が増えてきたがこちらも販売は伸び悩んでおり、普及には対応コンテンツの拡充が不可欠だ。
任天堂「3DS」も伸び悩み
「事前に想定したとおりの立ち上げにはなっていない」
4月下旬に開かれたアナリスト向けの事業説明会で、任天堂の岩田聡社長は「ニンテンドー3DS」の販売動向について悔しさをにじませた。2月26日に発売された3DSは裸眼で3Dゲームが楽しめる新型機。だが、今年3月末までに400万台と見込んだ世界販売台数は361万台と未達に終わった。
ゲーム雑誌出版のエンターブレインによると、3DSはゲーム機の国内販売台数で2、3月にトップに躍り出たが、すぐに失速し4、5月は首位を明け渡した。発売後まもなく東日本大震災に見舞われるという逆風もあったが、ゲーム業界に詳しいアナリストは3DSの不振を「ソフトのラインアップ不足が原因」と断言する。3Dテレビと事情は酷似している。
任天堂が新型ゲーム機を発売する際は、自社開発ソフトを複数投入して販売を牽引(けんいん)することが通例。だが、今回3DSと同時発売されたソフト8作品のうち、7作品は任天堂以外の外部メーカーのソフトで、看板タイトルの不足に泣いた格好だ。
任天堂は16日に人気シリーズ「ゼルダの伝説」の3DS版を発売し巻き返しを期すが、空振りに終われば、任天堂だけでなくゲーム業界全体にとって重要な成長エンジンを失うことになりかねない。