2011年6月7日火曜日

地デジ移行に待ったがかかる?節電ムードの余波で、テレビ難民が続出

地デジ以降までのカウントダウンもあとわずかとなりましたが、アンテナ工事にこのような問題が起きていたとは意外でした。ネットでも最近はテレビ番組を視聴することはできるので、それほど困るような人はあまりいないと思います。

地上デジタル放送への移行まで残り2ヵ月弱。総務省は3月10日に昨年12月時点での地デジ普及率を94・9%と発表したが、今、残り約5%をめぐって新たな懸念が浮上している。
そもそも、地デジを視聴するには、テレビやチューナーなど対応受信機を購入し、アナログ放送のVHFアンテナからUHFアンテナに交換するか、ケーブルテレビなどに加入する必要がある。
だが、ここにきて地デジへの移行がスムーズに進まなくなっているという。都内の大手家電量販店のテレビ担当店員がこう語る。
「アンテナ工事やケーブルテレビのインフラ工事の依頼が混み合い始めています。今夏も昨夏のような猛暑に見舞われたら、アナログ停波の7月24日以降にテレビ視聴ができなくなる“テレビ難民”が続出する恐れがあります」
猛暑と地デジ関連の工事、両者にはどんな関係性があるのか?
「福島原発事故を機に節電ムードが高まり、省エネ型のエアコンが飛ぶように売れています。商品販売後、量販店はエアコンの取り付け工事を外部業者に依頼しますが、実はその多くが地デジのアンテナ工事やケーブルの配線工事を掛け持ちしている。そんな業者に工事依頼が集中し、すでに現場の技術者が足りない状況になり始めています。アナログ停波直前の6、7月はエアコンの取り付け工事のピーク。梅雨明けに暑くなればなるほど、技術者不足は深刻になるでしょう」
テレビはあるのに、アンテナの工事待ちで視聴できない……。そんな最悪の事態が、ヘタをすると数百万もの世帯で起きかねない!?
一戸建てやマンション向けにアンテナを設置している電気通信工事会社「受信サービス」(東京都)の松尾建治社長がこう話す。
「弊社HPのアクセス数はこの数ヵ月間で10倍に急増しました。連日、工事依頼の電話も鳴り続け、月約300件の依頼を受けて、もうパンク寸前……。15人の技術者が休日返上で朝から晩まで働き続けていますが、作業は一日にひとり1、2件が限界なんです」
現時点での予約状況は?
「すでに7月末まで予約は満杯です。最近ではひとり暮らし向けのアパートやマンションオーナーさんからの工事の依頼が殺到していますが、断らざるをえなくなっているのが現状です」
アンテナ工事を請け負う街の電器店も、工事費用の見積もりだけで「1、2ヵ月待ち」というところが少なくない。業者によっては、工事を依頼しても移行日に間に合わないという状況がすでに出てきているのだ。
さらに頭の痛い問題もある。
「アンテナ工事などにかかる費用は、基本的に私たち設置業者の言い値で決まります。平均的な費用は数年前の3万円台から、現在は5万円台にまで跳ね上がっていて、値引き交渉をされた途端に適当な理由をつけて工事依頼を断る業者もいる。要は『儲けの出ない仕事なんてやらない』と、仕事を選び始めているんですよ」(埼玉県のあるアンテナ設置業者)
工事を行なう技術者がいなければテレビが見られない……。今は買い手の立場が超不利なのだ。
さらに移行日が迫れば迫るほど、地デジのアンテナ工事依頼のハードルは高くなる。
「アンテナ工事は屋根の上で行なう仕事です。梅雨は雨で濡れた屋根が滑るし、夏は目玉焼きが作れるほど屋根が熱くなる。脱水症状を起こしたり、靴底のゴムが溶けて屋根にひっついたりして大変。だから、そんなハイリスクなアンテナ工事を引き受けるくらいなら、『身の危険が少ないエアコンの取り付け工事を優先的に受けよう』と考える業者も増えてくるでしょう。アンテナ工事の申し込みが遅くなると、断られる可能性が高くなると考えておいたほうがいいかもしれません」
テレビ難民になりたくなければ、明日にでも量販店や街の電器店に駆け込んだほうがよさそうだ。