2011年3月11日金曜日

“ただ明るい”から“明かりの質”を重視する傾向に――2011年のLED電球を見る

日本の電球の技術って他の国からみてもかなりのレベルに進歩していると思います。知人の外国の方が、「なんで日本のライトはこんなにも白くて綺麗なんだい?」と言われたことがあります。しかし、この照明の展示会は、一般の人には専門的過ぎて敷居が高い感じがしますね。

LED電球が現実的な価格になってから、2年目を迎えて開催された今回のライティング・フェア2011。まだLED電球が目新しかった頃に比べ、展示されているのバリエーションは、ますます豊富になってきている。ここでは、会場で展示されていたLED電球に的を絞って紹介しよう。
東芝、“マルチ拡散グローブ”で配光性が向上したLED電球。高出力タイプも
東芝のブースでは、同社のLED電球「E-CORE(イーコア)シリーズ」から、白熱電球のように光が広がる一般電球形が展示されていた。4月20日に発売予定で、希望小売価格は5,985円。
従来よりも大きなグローブを採用し、電球らしい自然な光の広がりを狙った製品。密閉器具にも対応しており、ランプ全体の光の広がりや明るさが必要な器具に最適としている。昼白色は600lm、電球色は485lmの明るさ(全光束)があり、どちらも40W形白熱電球以上の明るさがある。
光の拡散性を向上する技術としては、大きなグローブで電球内部の広い散乱空間を確保するとともに、グローブの材質自体も高い拡散性のある「マルチ拡散グローブ」を採用。これにより、光の拡散性は260度と、従来よりも大きく向上したという。また、グローブ全体が穏やかに光るため、明るいLED電球でありながら不快な眩しさ感(グレア)を抑えたあかりとなっている。
さらに、参考出展ではあるが、さらに明るく光が広がる“高出力タイプ”のLED電球も展示されていた。全光束は1,100lmと、60W形白熱電球(810lm)の全光束を軽く超える。しかも、光の拡散性の配光角は270度。LEDチップの配置の工夫と、最新の放熱技術開発により、サイズも白熱電球サイズに抑えられるという。価格は未定。
そのほかにもボール形や、内部にレンズを取り付けて拡散性ときらめき感を向上させたミニクリプトン形などが展示されていた。発売は未定ながらも、ほとんどの製品に型番が明示されている。イーコアシリーズのさらなるバリエーションの拡充が予想される、意欲的な展示がなされていた。
三菱オスラム、鮮やかな発色のLED電球
三菱電機オスラムのブースでは、昼光色、電球色ともに全光束が810lmという、日本電気工業会が規定する60W形白熱電球と同等の全光束のLED電球が展示されていた。一般電球形のラインアップの中ではパラトンシリーズの最上位機種に位置づけられている。全製品が参考出品で、価格は未定。発売は年内中となる予定。
特徴的なのは、電球色で平均演色評価数はRa90と非常に高い数値を実現している点。しかも、電球色に淡いグリーンと赤のLEDをプラスすることにより、微妙な色合いを測る「特殊演色評価数」についても、赤色の再現性が高く、LED電球では色がくすんで見える生鮮食品の色合いも鮮やかに再現するという。
また、放熱を司るヒートシンクが特徴的だった。810lmという全光束を実現させるため、昼光色の消費電力は12WとLED電球の中でも高め。回路の熱によりダメージが懸念されるところだが、シートシンク内部に空洞を設けることで、表面積を広く取り、放熱効果を上げる工夫がなされている。
このほか、2008年より発売されている、明るさを抑えたLED電球「パラトンクラスA/クラスP」についても、新製品がが展示されていた。一般電球形・クラスAの白色の全光束は90lmから175lmへ、電球色も83lmから175lmへと全光束がアップ。小型電球形のクラスPも同様に、白色の全光束は65lmから130lmへ、電球色も60lmから130lmへとアップする。2011年夏ごろから販売が始まり、徐々に従来品と入れ替わるという。
ハロゲンランプ形は、低色温度タイプが従来と比較した形で展示されていた。色温度は3,000Kから2,700Kと従来のハロゲン電球の光色に近くなったが、これはユーザーの要望に応えた背景があるという。
パナソニック、全方向に光が拡散するLED電球
パナソニックのブースでは、3月18日発売予定の、光が全方向に広がるLED電球が展示されていた。店頭予想価格は3,500円。
配光角は300度と、現時点で“業界最高角度”を実現したというLED電球。昼光色タイプの全光束は、40W形白熱電球と同等の明るさと同等という485lmとなっている。
会場では、光色従来品、器具に取り付けた比較に加え、内部構造を見せるカットモデル、新技術説明する詳しい図面とともに展示しており、多くの来場者が興味深げに足を止めて見入っていた。
そのほか、業界で初めて断熱材施工器具に対応した、斜め取り付け専用の小型電球タイプのLED電球も、新たに加わるエバーレッズのLED電球の1つとして、実物と共に展示していた。発売は4月25日を予定している。
NEC、明るく演色性が高いミニクリプトンタイプのLED電球
NECライティングのブースでは、今春よりLED電球のラインナップに加わる、ミニクリプトン電球の代替となるE17口金のLED電球、ハロゲンランプの代替形となるE11口金のLED電球型が展示されていた。発売予定日は4月25日で、店頭予想価格は前者が3,000円前後、後者が7,000円前後。
小型電球タイプのLED電球は、NECでは初の投入となる。光色は、昼白色と電球色の2色。昼白色の明るさは470lmと、日本電球工業会が規定する白熱電球40W(全光束440lm以上)の明るさで、電球色でも410lmとそれに近い数値となっている。小型電球タイプながら、同社E26口金のものに引けをとらない明るさが特徴的だ。
また、ともに平均演色評価数が昼白色でもRa80と、高い色の再現性を備えている。しかもどちらも4.5Wという低い消費電力ながら、高い発光効率が得られる。さらに、密閉器具にも対応している。配光角は120度、定格寿命は40,000時間となる。
すでに発売されているE26タイプと一緒に展示されていたが、小型で低い消費電力なのにもかかわらず、ひけをとらない明るさが印象的。どちらの光色も偏りのないニュートラルで自然な色合いが再現されていた。
一方、小型のスポットライトやダウンライトに使用される、E11という小さな口金のハロゲンランプの代替形のLED電球も、まもなく発売する新商品として展示されていた。配光角が30度の広角仕様と、18度の中角仕様がラインアップに加わることになる。光色はどちらも昼白色と電球色の2色。定格寿命は30,000時間と、ハロゲンライトの約10倍の寿命となる。
特徴的なのはその明るさ。どちらも60W形相当の明るさをもつという。広角の昼白色では、全光束が330lm、電球色は275lm。そして、中角の昼白色は300lm、電球色は250lmである。電球色の演色評価数はRa80と高く、ハロゲンらしいキレのある光と自然な光色が印象的であった。
日立、一般形・小型電球形・ハロゲンなど充実したラインナップ。年内に商品化
日立アプライアンスのブースでは、配光性を白熱電球により近づけた一般電球形、発光面積が広いビッグカバーを採用したミニクリプトン電球形、そして、ハロゲンライト代替LED電球が展示されていた。すべて参考出展となっており、スペック、価格、発売予定日などは未定。年内中の商品化を目指すという。
一般電球形LED電球の大きな特徴は、白熱電球とほぼ同じ光の配光性が得られるという点。発光面積が大きくなり、光も広がる仕様となっている。また、放熱部が現行品よりもコンパクトになっており、見た目もより電球に近くなっている。
実際の器具に取り付けたものも数点展示されていたが、器具の輝き方に偏りが少なく、見た目の印象はとても電球らしいかった。また、開口部の広い器具にとりつけても、放熱部が小さいためほとんど見えず、その様子は白熱電球そのものである。
昼光色、電球色のほか、それぞれに調光器対応タイプも用意するなど、ラインナップの充実を図るという。密閉器具にもできるだけ対応したいとのことだった。
小型電球形も大きな発光面が特徴的である。サイズはミニクリプトン電球とほぼ同じのコンパクトだった。一般電球型同様に、光色は2色、さらに、調光器に対応するという。
ブース内では、ダウンライトに取り付けたものも展示されていた。横向きに取り付ける器具にもかかわらず、見た目の印象、配光性に光のムラができにくく、光の偏りがほとんど感じられなかった。
ハロゲンランプ代替形LED電球も同時に展示されていた。配光角のバリエーションは狭角、中角、広角が用意され、実際にブース内を照らす実演が行なわれていたが、実用性の高さを見せていた。光色も自然だった。
前田硝子の「easyZLamp」は、白熱電球の外観そのままのLED電球
90年近くガラス製造に携わっているガラスメーカー「前田硝子」のブースも、LED電球を展示していた。特筆すべきは、電球そのものの形をした全面発光タイプのLED電球である。しかも、電球のグローブはガラス製で、点灯している様子はまさしく白熱電球のそれである。
同社によれば、もともと電球用ガラスを長年にわたって提供してきた技術に加え、大きなヒートシンクが不要となる「新構造ヒートシンク」と、日亜化学工業認証の高効率LED配置することにより、このLED電球が実現したという。また、LEDモジュールは電球内部で立体的に配置されているため、配光角は240度を実現しているという。さらに、スイッチング回路を使わずに発光するためノイズが発生しにくいという。
明るさは、色温度3,000Kの電球色が全光束330lm、昼光色は370lmと、30W白熱電球クラス。一般電球型は、さらに明るい大き目のものや、細い器具に対応するスリムなT型、きらめき感のあるクリアタイプなど、使用用途に応じた14種類をラインアップしている。そのほか、全面発光を謳う小型電球形の4種類も含め、豊富なバリエーションを展示していた。
既に商品化されており、専用の販売サイトおよび、代理店を通しての購入が可能という。「一般電球形06WE26-AO」の参考価格は3,129円。
全体的には、参考出展品や、間もなく発売商品にかかわらず、これまでのただ単に明るいだけのものから、光の拡散性や色の再現性を向上したものなど、「あかりの質」を意識した製品が数多く見られた。また、用途別、シーン別の使い方など、より具体的な提案が見られたのも印象的であった。これからのLED電球は、こうした傾向が続いていくと見て良いだろう。