2011年3月22日火曜日

電機メーカーのサプライチェーン混乱、東北電の計画停電追い打ち

計画停電で予定がなかなか立て難いとは思いますが、製造業の方もなんとかこの局面を乗り切っていって欲しいです。

東日本大震災で、電機メーカーのサプライチェーンが混乱し始めている。被災地域で操業停止の工場は、相次ぐ余震や電力不足で復旧の見通しが立たない状況だ。
さらに、東京電力<9501.T>だけでなく東北電力<9506.T>も計画停電の実施を発表したことで、生産停止の地域が拡大。東北地方に集積する部品メーカーの生産活動には追い打ちとなり、スマートフォンや自動車製造の「ボトルネック」の恐れから、自社工場や協力工場での「代替生産」を検討する動きが出始めた。

<日本海側の工場に波及>
東京電力の計画停電が14日夕から実施されたのに続き、東北電力も16日から計画停電を実施することで、工場の操業を停止する地域は、大地震で直接の打撃を受けた太平洋側だけでなく、比較的被害の軽かった日本海側の工場にも波及する。TDK<6762.T>は、岩手県と茨城県の2工場の破損を発表するとともに、秋田県を中心に東北電力がカバーする生産拠点が19工場に及ぶことを明らかにしている。東京電力のエリアと合わせると24工場で、特に主要生産拠点の秋田県だけで15工場にのぼる。秋田では主に、コンデンサーや高周波部品を製造しており、スマートフォンの部品として供給している。
東北電力の計画停電は、ルネサスエレクトロニクス<6723.T>の操業再開も不透明にしている。すでに国内22拠点中、東北地方の7拠点の生産を停止中。個々の工場の生産能力は公表されていないが「全社キャパの10―20%程度が影響を受けている」(UBS証券の安井健二アナリスト)状態だ。300ミリラインを持つ山形工場(鶴岡市)は大きな損傷は確認されずに再稼動の準備に入っていたが、山形県が計画停電の対象地域に入ったことで、「設備立ち下げ」作業に追われることになった。
同じく最先端設備の300ミリのウェハーラインを持つ那珂工場(茨城県ひたちなか市)は建物被害が報告されている上、停電が続いている状態。クリーンルームが必要な半導体工場は操業再開に相当の時間が必要だとみられている。那珂工場のSoC(システム・オン・チップ)は国内携帯メーカーに供給しており、マイコンは世界各国の自動車メーカーに供給している。山形工場のSoCは、デジタルカメラやゲームなどデジタル家電向けに供給。稼働再開の時期によっては、納品に滞りが出る可能性もあり、組み立て工程(後工程)の作業を中心に西日本地区の工場での代替生産の検討に入った。

<スマートフォンにボトルネックの恐れ>
東北地方に集積している電子部品メーカーの復旧が一層不透明となったことで、スマートフォンの部品供給にも支障が出る可能性が現実味を帯びてきた。スマートフォン関連では、村田製作所<6981.OS>でも、電気・ガス・水道のインフラが寸断しているため、宮城県内の2拠点(登米工場、仙台工場)の操業のめどが立たない。仙台工場で製造する「弾性表面波フィルタ(SAWフィルタ)」は携帯電話の基幹部品。もともと仙台工場と金沢工場の2拠点体制で生産しているが、生産休止期間を見極めた上で、代替生産を検討する方針。
ヒロセ電機<6806.T>は国内工場の全3拠点とも東北地区で、岩手県の東北ヒロセ電機(宮古市)と一関ヒロセ電機(一関市)、福島県の郡山ヒロセ電機(郡山市)の3工場とも操業を停止。郡山を除いて電気は通じておらず、交通制限もあるため早期復旧の見込みは立っていない。同社で製造するコネクタ部品はフィンランドのノキア<NOK1V.HE>や米モトローラ<MOT.N>の携帯電話に供給しているとされているが、同社では国内工場の操業停止の長期化に備えて、自社の海外工場や協力会社での代替生産の可能性を探り始めた。
ニコン<7731.T>が操業を停止した宮城ニコンプレシジョン(刈田郡蔵王町)では、スマートフォンに使われる液晶向け露光装置の製造を手掛けており、中小型液晶の需要拡大に応じるため、隣接地で新工場を建設する計画(7月稼働予定)。ニコンは中小型液晶用露光装置の製造をほぼ独占しているため、宮城県の工場の稼働停止が長引いたり、7月の生産能力増強が遅れれば、日本や韓国メーカーによるスマートフォン用液晶パネルの増産計画に支障をきたす恐れも出る。

<DRAMとNANDはシリコンウエハー調達に懸念>
一方で、DRAM生産への影響は限定的なようだ。エルピーダメモリ<6665.T>は秋田県のDRAMの工場「秋田エルピーダ」が電力不足で操業停止の状態だが、組み立て工程(後工程)の拠点であるため他工場での代替生産は比較的容易で、生産量も同社の出荷量の10%以下にとどまる。前工程のウエハー工場は広島県にあり、11日午後の地震で揺れに敏感な設備の一時停止はあったが、短時間の点検で復旧し、その日のうちに通常のオペレーションに戻ったという。
東芝<6502.T>のNAND型フラッシュメモリー工場もこれまでの影響は限られた。システムLSIを生産する岩手東芝エレクトロニクス(北上市)のラインは11日から稼働停止しているものの、三重県の四日市市のNAND工場は、地震直後の設備停止があっただけで、同日中に設備点検をして12日までには復旧、現在は通常操業しているという。
もっとも、半導体材料メーカーの信越化学工業<4063.T>では、300ミリのシリコンウエハー製造子会社の白河工場(福島県西郷村)が地震被害で操業を停止中。自社の工場に直接的な損害は少なくても、シリコンウエハーの供給量の減少など「部材調達の影響は見極める状況にある」という。