お金を使わないようにお弁当作る人も増えているけど、こんなに高い炊飯器買ったら元も子もないですね~。
内食ブームや本物志向の高まりでこのところ人気を集める5万円を超える高級炊飯器。出荷数で炊飯器全体の約10%、金額では約25%を占める。炊飯器業界でシェアトップながら、高級炊飯器では最後発と大きく出遅れた象印マホービンが平成22年9月に発売した圧力IH炊飯ジャー「極め炊き」(11万5500円)が、発売から5カ月で2万台と好調な売れ行きだ。
各社が高級炊飯器を相次いで投入する中、象印マホービンは普及用の価格帯にこだわり、売り上げが低下。家電の情報誌への掲載頻度も減った。同社第一事業部の後藤譲マネージャーは、「注目度とブランド力は連動するので、危機感があった」と振り返る。
状況を打開するため、同社では21年2月、高級炊飯器の開発チームを立ち上げた。しかし、リーダーの後藤マネージャーは炊飯器担当となって2カ月もたっていなかった。「そもそもおコメのうまさとはなんぞや、というレベル。とにかくお客さまの満足度を上げることが第一と考えた」。ご飯に定評のある飲食店の食べ歩きを重ねた。そうして発見したのが、堺市堺区の人気店「銀シャリ屋げこ亭」だ。
同店のごはんは味や弾力、粘りなど象印の評価基準からも非常に優れ、「なにより一緒に行った家族が家よりおいしいといったのが大きかった」という。後藤マネージャーはその場で交渉して、協力を取り付けた。同店のごはんのおいしさの要は、浅底の羽釜。お釜の底が浅いため温度が上がりやすく、横の羽から熱が伝わって均一加熱になる。釜の内部の15カ所で温度を測ったところ、温度差が最大約10度ときわめて小さく、研究スタッフらも驚いたという。
しかし、内釜への羽釜採用には問題があった。同社は側面が真空の内釜「真空釜」で高い評価を得ており、社内的にも「上位機種は真空釜」という“常識”が浸透。開発チームからも「真空釜を外してもいいのか」と戸惑いの声が上がったが、「従来の技術にこだわって顧客満足度が下がっては本末転倒」と開発を進め、発売にこぎつけた。