日本の足元を見るような商売をしている中国にはちょっと気分が悪くなります。早くレアアースの代用品が実用化できるレベルまで進歩できることを祈っています。
電機メーカーが相次いでエアコンの値上げに踏み切っている。三菱電機が11月に発売する家庭用エアコンの新製品について平均約1万円値上げしたのを皮切りに、同業他社もこれに追随する動きを見せている。背景にはエアコンの基幹部品に使われるレアアース(希土類)の価格高騰がある。レアアースを含むレアメタル(希少金属)の価格は今後も高止まりすることが見込まれ、地道なコスト削減で吸収するメーカー側の自助努力は「もはや限界」(業界関係者)との声が大半。消費者の理解を得ようと、付加機能を増やす動きも出始めた。
「レアアースの価格は昨年4月に比べて10~12倍に高騰した。値上げはやむを得ない」。三菱電機の梅村博之常務執行役はこう言ってため息をつく。同社は11月上旬から順次発売する家庭用エアコンの価格を5~15%値上げし、業務用についても値上げを検討中だ。
日立アプライアンスは、10月から国内の業務用エアコンを1割引き上げることを決め、家庭用についても新製品から値上げする方向で調整している。
さらに業務用エアコンで国内首位のダイキン工業も、今年4月に値上げを実施したが、10月にも再値上げする方針だ。家庭用も今秋に発売する新製品について値上げする方向で検討を進めている。
エアコンは季節家電といわれ、これまで夏の天候が売れ行きや価格に影響してきた。例えば2009年は猛暑の影響で販売が伸び、平均単価が上昇した。だが、今回は明らかに事情が違う。
各社の採算性を圧迫しているレアアースはエアコン室外機の圧縮機や室内機のモーターなどに使われており、磁石の磁性や耐熱性を高めることで省エネ性能の向上に貢献している。特に今夏は猛暑に加えて節電意識の高まりもあり、一段とレアアースの存在感が増している。
高騰の原因となっているのが中国の動向だ。中国は世界生産の9割以上を握っているが、昨年から環境保護を理由に生産・輸出規制を強化。これが需給バランスを崩し、モーターに使われる強力磁石の主原料となる「ネオジム」の需給が逼迫(ひっぱく)している。また、ネオジム磁石の磁力を落ちにくくする「ジスプロシウム」にいたってはほとんどが中国南部で生産されており、状況は深刻だ。
だが、家庭用エアコンは家電製品最大の“激戦区”だけに各社とも値上げを避けたいのが本音だ。国内シェア首位のパナソニックは10月21日から順次発売する新製品の価格を昨年と同水準に据え置いた。「経営努力で吸収し値上げは回避した」(中島幸男役員)といい、他社と一線を画した。
また、値上げを実施するメーカーでも、目新しい新機能を盛り込み、付加価値を上げることで消費者の理解を得ようとする動きもある。
東芝ホームアプライアンスが11月上旬に発売する家庭用エアコンの新製品は旧モデルに比べて1万円程度値上げするが、世界で初めて音声で操作できる機能を搭載した。同社は「付加価値向上による値上げで、レアアースの(価格上昇)分は据え置いた」(石渡敏郎社長)と説明している。
同じく値上げを決めた三菱電機も、新製品に独自開発のセンサー「エコムーブアイ」を搭載。センサーが人の位置や体感温度を感知し、冷房と送風を自動で切り替える業界初の機能を持たせた。同社は「『我慢する節電』から『楽しく続けられる節電』」を強調している。
もっとも、エアコンの原材料をめぐってはレアアース以外にも不安は多い。エアコン1台には平均で鉄25キロ、銅8キロが使われている。鉄鋼や銅地金の価格も高騰しており、メーカーの苦悩は続きそうだ。