これからのエコ社会に向けてパナソニックが大きな賭けに打って出ました。マレーシアを中心に様々な太陽電池に関する開発を一挙にする大型の工場を建てることで、今も伸びつつある太陽電池の需要に対応させるみたいです。
パナソニックは、マレーシアにHIT太陽電池の新たな生産拠点を建設する計画を明らかにした。
マレーシア ケダ州のクリムハイテクパーク工業団地内に、パナソニック エナジー マレーシア株式会社を2011年12月に設立。太陽電池のウエハからセル、モジュールまでの一貫生産を行なう拠点とする。
投資金額は450億円。新工場の年間生産能力は300MWを計画。2012年12月から生産を開始する。
パナソニック エナジー社社長である伊藤正人役員は、「パナソニックグループは、創業100周年を迎える2018年のあるべき姿としてエレクトロニクスNo.1の環境革新企業を目指しており、太陽電池事業は環境革新企業の実現の牽引役になる。国内においては、グループ販売基盤を最大限に活用する一方、グローバルには、市場特性に応じた事業展開を進め、商品力拡大、生産体制の強化に取り組む。これまでは、セルは日本で生産し、モジュールは地産地消でという形にしてきたが、マレーシアの新工場は初の一貫生産工場になる。2012年度には国内ナンバーワンシェアを獲得し、2015年には全世界で1.6GWを生産し、グローバルでのトップグループ入りを目指す」とした。
現在、パナソニックグループのHIT太陽電池の生産拠点は、ウエハ生産が北米工場のほか、外部から調達。セル生産は二色の浜工場、島根三洋電機の2拠点。モジュール生産は国内市場向けの二色の浜工場および滋賀工場、北米市場向けのモンテレー工場(メキシコ)、欧州市場向けのハンガリー工場の体制となっており、新工場は、これらの体制とは別に、世界各国へ出荷することになる。
なお、生産するのは変換効率22%を目標としている新型HIT太陽電池となり、2013年度以降に製品化を予定している次世代HIT太陽電池の生産は、同工場では行なわない。
パナソニックでは、兵庫県尼崎市のプラズマディスプレイパネル第3工場を、太陽電池生産の拠点に転換する計画を打ち出していたが、先頃発表した構造改革のなかで、この計画を撤廃。パナソニックの大坪文雄社長は、「計画を立案した2年前とは状況が変わった。日本国内では、電力不足の問題や円高の問題もあり、いまやソーラーを国内生産して積極展開する理由はない。海外で生産するメリットの方が大きい」と発言していた。
新会社であるパナソニック エナジー マレーシア株式会社の資本金は、9億2,000万リンギット(約225億円)。出資はパナソニック アジアパシフィック株式会社の100%出資となる。また、建屋面積は、約7万平方m。従業員数は約1,500人を見込んでいる。
三洋電機の前田哲宏常務執行役員は、「マレーシアは、水が潤沢であり、電力コストも日本の60%程度であるなどインフラが整備されていることに加え、政府の投資支援が協力的であること、円高リスクを回避できること、豊富な質の高い労働力を確保できるといったメリットがある」と、選定理由を語る。
また、「コスト競争力と、性能の差別化、営業・販売力の3つが揃った時に競争に打ち勝つことができる。とくに、コスト競争力においては、一貫生産および供給能力の拡大が鍵になる。マレーシア新工場での一貫生産により、プロセス削減、輸送費用の削減、消耗部品の削減などのメリットが期待でき、2桁%のコスト削減効果がある。グローバル市場の変動にも対応できる一貫生産の新拠点体制を構築することで、世界最強の工場および製販連携の体制により世界市場で勝っていく」などと語った。
太陽電池市場は、世界的な環境意識の高まりや、日本をはじめとする各国における補助金制度の実施、電力買取制度の導入などにより、2015年までの年平均成長率は7%増と高いが、価格競争が激化し、年率10%で価格下落が進展している。また、コモディティ化が進み、差別化が難しくなっているという背景もある
今回の新工場建設により、太陽電池の生産量を拡大。ウエハ、セル、モジュールの一貫生産の実現により、コスト競争力のさらなる強化を図れるとした。
さらに、「現状におけるHIT太陽電池の主戦場は住宅用だが、今後は産業用市場に対してもHIT太陽電池のターゲットを広げていく。また、これまでのモジュール販売に加えて、蓄電池などを組み合わせたシステム販売や、パナソニックグループの総合力を生かした『まるごとソリューション事業』との連携により、グローバル展開を加速する」(前田常務執行役員)とした。