まさかのこの事態を予想できた人はいませんが、テレビを購入することについてはいささか不謹慎ではありますが、最高の時期となりそうです。様々な家電が並ぶ中でも、特に値段の下落が著しいテレビはエコポイント導入時期と比べても安いです。
薄型テレビの価格下落が止まらない。家電エコポイント制度が終了した4月以降に軒並み下落し、サイズによっては1年前から4割も落ち込んだ。東日本大震災後の買い控えで在庫がだぶついたことが原因とみられている。消費者にとっては思わぬ“買いどき”の到来だが、メーカーにとってはただでさえ利幅の小さいテレビ事業の採算性が一段と悪化する恐れもある。
「例年、新生活需要の高い3月は小型を中心に売れ、価格も3月を底値に4月は若干値上がりするものだが、今年はそのまま下がり続けている」
調査会社BCNの森英二アナリストは最近のテレビ価格をこう指摘する。同社の調査によると、4月の薄型テレビの平均価格は20型未満から50型以上まですべてのサイズで価格が低下。特に、国内市場の43%を占める最大の「ボリュームゾーン」である30型台は3月初旬から今月中旬までの間に6000円以上下がり、5月9日からの1週間は平均4万9600円と1年前に比べ4割近くも下落した。
都内の家電量販店では昨年末に発売された32型が3万円台で販売されており、ポイント還元分などを差し引くと実質価格が2万円を切るケースもみられるようになった。“投げ売り”状態を生んでいる原因の1つが在庫の山だ。「エコポイント終了前の駆け込み需要を狙ってテレビを大量出荷したが、震災の影響で特需が吹っ飛んだ」と米ディスプレイサーチの鳥居寿一アナリストは話す。その結果、各社とも大量の在庫品を抱え、「4月に入って量販店、メーカーとも大幅値下げに踏み切ったのではないか」(鳥居氏)という。
国内シェア首位のシャープは4月から1カ月以上にわたって液晶パネル生産工場を休止したが、この背景には工業用ガスなどの部材不足に加えて、「在庫の解消を狙った」(業界関係者)との見方が根強い。
メーカー側も「32型を中心に価格が乱れている」と採算悪化に懸念を強める。一方で「4月は例年の3倍売れた。1100万台程度にとどまるとみられた今年度の販売台数が上振れする可能性もある」(メーカー幹部)と販売増に期待する声もある。
次の需要期である7月24日のアナログ停波を前に、ある家電量販店は「5~6月にかけて在庫が底をつく可能性がある」としてアピールしている。メーカー、販売店、消費者の思惑が絡み合い、価格動向をさらに読みづらくしている。