震災での生産の遅れを取り返すかのように稼動をさせている工場が多いようですが、電力不足がネックになっていて思うように生産率を向上できていないところもあるようです。大手なら自家発電装置を取り付けたりする余裕もあるかもしれませんが、町工場レベルだと無理みたいですね。
国内企業の多くが夏季休暇に入る中、半導体メーカーは例年通り休み返上で工場を稼働させる方針だ。当初は不安視された電力不足について、各社は「自家発電設備の稼働などで乗り切る」(富士通)構えだ。一方、デジタル家電需要の伸び悩みから、異例の長期休業を余儀なくされるケースもある。米国の信用力低下に伴う世界経済の不透明感が強まり、薄明かりが差したはずの半導体業界に陰りの色が見え始めている。
「震災による顧客の流出が想定より軽微で、今後は震災以前の出荷量に戻る」
こう語るのはルネサスエレクトロニクスの赤尾泰社長だ。強気の背景には自動車メーカーなどの生産が急ピッチで回復していることがある。回路設計などを行う国内10工場のうち、9工場を夏季休暇(13~21日)中も連日稼働させ、主力の電力制御用半導体「マイコン」の供給を増やす。
東芝も、パソコンや携帯電話のデータを記録する「NAND型フラッシュメモリー」を製造する四日市工場(三重県四日市市)など主力3工場で夏休み(12~22日)を返上する。スマートフォン(高機能携帯電話)向けの好調が続いているためだ。
さらに、国内に4拠点を構える富士通セミコンダクターも、20日から4日間の免震工事が予定されている福島県会津若松市の2拠点以外を連日稼働。データ記憶用半導体「DRAM」の国内唯一の専業メーカーであるエルピーダメモリの広島工場(広島県東広島市)も休み返上で稼働する。
ただ、被災地を除き地上デジタル放送完全移行が完了したことで、テレビなどの家電需要の反動減が予想され、欧米景気の落ち込みが追い打ちをかける。ルネサスはシステムLSI(大規模集積回路)などの需要減を見込み、子会社の山口工場(山口市)を14日から7日間停止。「1週間も工場を止めるのは異例」(関係者)という。
「米国債の格下げに端を発する形で世界経済に黄信号がともっている。盛り上がるとみていたパソコン需要もしぼんでしまう」(エルピーダメモリの白井康雄取締役)。回復基調とみられた業界にも、先行きに暗雲が漂っている。