人間の飽くなき探究心、そして欲が生んだといえる洗濯機のアクアは、革ジャンやブーツなども洗えるということで一人暮らしの女性や若い年代の夫婦が購入していくことが多いそうです。度肝を抜いてやりたかったと語る開発陣は、従来にはありえなかった機能を追加することにより、一進一退の他のメーカーとの競争に差別化を図りたかったそうです。
オゾンを使用し「水がいらない」AQUAを開発
もともとAQUAの製品化には、業務用分野で使用されるリン除去装置で採用していた鉄電解式の採用や、アルミ電解コンデンサの採用も検討された。だが、鉄電解方式では、鉄から出る茶色い水によって洗濯物に色が付着すること、アルミ電解コンデンサ方式では、当時、アルミ食器が体に悪いといった風評被害が出ていた時期でもあり、三洋電機としても採用するわけにはいかなかった。各種検証の結果、最も効果的とされたオゾンを使用することで、水洗いせずに除菌、消臭、汚れの分解をすることができる洗濯機の開発にこぎつけた。
「この間、実に2~3カ月。短期間に間に新たな技術を見つけては実験し、その効果が最大限に活用できないと考えれば次にいくというスピード感のある技術開発がすすめられた」と、三洋電機コマーシャルカンパニー 冷熱技術開発センターテクノクリーン開発部・廣田達哉部長は当時を振り返る。
オゾンの力で落ちにくい皮脂汚れも分解することができるようになり、ブラウスについているミートソースの汚れなどは水洗いしなくても分解し落とすことができるようになったほか、よく使う衣類や小物の除菌、消臭のほか、ブーツや革靴といった、水で洗濯できないものまで除菌、消臭ができる。
「衛生、清潔志向の高まりによって、少し臭いがついたものでも自宅の洗濯機で洗濯したり、クリーニングに出したりといった人が増えている。だが、あまりにも洗濯の回数が多いと、どうしても衣類が痛むことになる。オゾンの力を使って除菌、消臭することで、効率的な洗濯が可能になる」(三洋アクア ランドリー販売企画部販売企画課・内藤正浩担当課長)
除菌、消臭をするエアウォッシュ機能は、手軽に空気で「洗濯」することや、繊細なおしゃれな衣類、スーツなどを空気で「洗濯」するという使い方につながるのだ。
また、水洗いした場合にも、水道水に含まれている塩素化合物を分解できる効果によって、塩素化合物による色落ちを抑えることができる。さらにオゾンは残留しないという特性も大きな要素だ。
一方で、風呂水をオゾンで浄化した「オゾンすすぎ」ができることから、水道水の使用量を削減。最終のすすぎ水もキレイにして捨てずに使うことができる「アクアループ」によって節水を実現した点も大きな効果だといえる。洗濯乾燥機では、乾燥時に除湿用の冷却水として水道水を大量に使用していたが、これもアクアループによって再利用できるようにしているという。
「水をキレイにして、もう一度利用することができれば、限られた水でも繰り返して無限に利用することができる。水をたくさん使用した方が汚れが落ちやすいという洗濯機の常識は、水の使用量が増えることにつながるが、これをアクアループで解決できる。しかも、自然に返す場合にも水をキレイにして返すことができる。オゾンの採用には、こうした自然にやさしい製品を作りたいという発想がベースにあった」(内藤氏)とする。
AQUAの製品化の原点は、水を循環することで、水を使わない洗濯機を作ることだった。その際に、電解水を利用するのでは時間がかかりすぎ実用的ではないため、その解決策としてオゾンに辿り着いた経緯がある。オゾンでは、洗剤に含まれている界面活性剤を分解。排水時にこれを減らすことができる。琵琶湖のほとりで開発を行い、自然と共生する同社洗濯機事業部門ならではの考え方ともいえる。