32インチのテレビが3万円台から売られているとあって、メーカー側の儲けも相当少なくなるのも頷けます。どれだけ販売しても利益がほとんど生まれないという悪循環は、作り手の仕事に対する意識も低下させてしまいますね。
24日の地上デジタル放送への完全移行(岩手、宮城、福島の3県除く)があと3日に迫り、薄型テレビが“特需”に湧いている。家電量販店ではテレビ売り場の在庫が一掃され、品薄状態が続く。ただ、単価下落は続いており、販売店にとってうまみは少ない。メーカーも出荷数の増加が利益に直接結び付かず、「いくら作ってももうからない」(大手)状態に陥っている。
地デジ移行直前の3連休(16~18日)。テレビ売り場は最後の駆け込み客で大盛況だった。
ビックカメラ有楽町店(東京)は店内に整理券を発行する機械を設置。実際に「6月の週末は100人待ちになることもあった」(販売員)。この日も他フロアの販売員やメーカー担当者らが応援に駆けつけ、“総動員”で接客にあたった。
薄型テレビは「国内メーカーの製品で32型以上にほとんど在庫がない」(同)ため、急きょ中国メーカーの製品を輸入。多くの製品の納品が8月以降にずれ込んでしまうため、持ち帰り可能な小型テレビですら、地デジ対応を急ぐ顧客には好評だったという。
ただ、売り場のにぎわいに反して、利幅は決して大きくない。今年に入り、テレビの価格下落が加速しているからだ。
調査会社BCNによると、売れ筋の30型台は4月に入ってから平均単価が5万円前後まで下がった。ただ、「6月以降は品薄の影響で価格は下げ止まった。上昇に転じたものもある」(道越一郎アナリスト)と一部では状況は変わりつつあるという。
過当な価格競争はメーカーにも大打撃を与えている。国内シェア首位のシャープは平成22年度、テレビ事業で何とか黒字を死守したものの、片山幹雄社長が「勝っても赤字の市場では戦わない」と言い切るように、もはや大きな収益事業とは位置付けていない。
ソニーの事情も深刻だ。テレビ事業は16年度から7年連続で赤字を計上。今期も東日本大震災の影響などで黒字転換は難しいと見込む。パナソニックも、22年度のテレビ販売台数は2023万台と過去最高を記録したが、テレビ事業は3年連続で赤字だった。
地デジ移行後のテレビ需要は急速に落ち込み、移行後の販売動向は過去最高の出荷台数を記録した昨年(2519万台)に比べ、「半減する」との見方が大半だ。関係者は需要喚起と価格維持に頭を悩ませる日々が続きそうだ。